中国の通貨切り下げが世界経済の安定の原因になる理由

公開日: : 最終更新日:2015/08/27 お金に関すること, 中国の事情

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中国の通貨、人民元切り下げは過去20年最大の切り下げ幅で、株式市場はじめ金融市場に大混乱を与えました。

これは、世界各国の新たな通貨切り下げ競争につながるのでしょうか。
Global currency wars: why China’s devaluation is a peace offering misunderstood by the world

2015年7月は、中国にとっては、経済が停滞し、株価は暴落し、輸出は大不振でした。為替の切り下げはもっともいいタイミングで行われたとも言えます。

しかし、他の国にとっては、中国の通貨切り下げは、輸出が相対的に不利になることに他ならず、競争力の低下を避けるためには、各国も通貨を切り下げようと考えることになります。

そうでないと、輸出用の製品を生産している国内の工場の稼働率がさがり、失業率も高まるからです。大国の通貨切り下げは、失業の輸出と言われる理由です。

現実に中国と輸出品目がバッティングするベトナムもすぐさま切り下げました。

このような為替切り下げ競争は1930年代にも起こり、これがブロック化経済が起きる原因となり、資源を囲い込まれてしまった日本が石油を求めて、中国や東南アジア諸国の侵略を開始した原因となったのです。

ですので、通貨を人為的に切り下げることは、先進国、特にアメリカは非常に批判します。現在、アメリカの大統領選を争っているドナルドトランプ氏も、「中国は我々を破壊する」として激しく非難しています。

しかし、専門家は、中国の為替切り下げは大した影響がない。と指摘します。実質実効為替レートでみると、中国の通貨、人民元は2004年以来、50パーセントも価値があがっています。そのため、3%程度の切り下げは大勢に影響がないというのです。

第二次大戦の原因となった、1930年代の通貨切り下げ競争では、先進国の切り下げ幅は10%以上のことが多く、金本位制を揺るがすほどのものでした。

さて、今回の中国の通貨切り下げの目的ですが、輸出の競争力を高めるという狙いはもちろんあるでしょうが、もうひとつの狙いとして、人民元を、IMFの準備通貨(SDR)に採用されることを狙いとしているという指摘があります。

IMFのSDRを構成する通貨は、現在、ドル、ユーロ、日本円、そしてポンドです。これらの通貨は、世界中で流通する通貨という地位を確保しています。これに人民元が加わることが目的だとのことです。

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国際取引での決済通貨として人民元が採用されれば、中国と取引をする各国は、為替の交換手数料を削減することができますし、為替リスクも考えなくてよくなります。結果的に中国は取引量を拡大することができます。

中国は世界2位の経済大国となり、実力的には採用されてもおかしくないのですが、IMFが人民元を採用してこなかった理由に、人民元はドルペッグといって、ドルと連動するようにしていたからです。

そのため、ドルが他通貨に対して強くなったり、弱くなったりするのに応じて、人民元も強くなったり弱くなったりしていたのですが、今回の為替切り下げは、ドルの為替変動から独立した動きとなり、いわば、ドルペッグをやめる動きと言えます。

市場実勢に応じて、人民元が変動するようになるということであり、IMFは今回の切り下げは歓迎しているのです。そして、人民元のSDRへの採用可能性が高まったとも言えます。

国際金融市場にとっても、ドルとペッグした、市場実勢を反映しない通貨よりも、市場実勢に応じて動く通貨のほうが好ましいことです。

ですので、中国の通貨切り下げは、通貨安競争をもたらして各国の緊張を高めるというよりも、世界の安定に貢献するものだという指摘もあります。

中国が輸出拡大のためだけに通貨の切り下げをしたとすれば、そのためには3%程度では足りず、10%以上の切り下げが必要だっただろうというのが市場のコンセンサスです。

また、通貨の切り下げによる輸出競争力の回復という政策は、以前ほど効果がないことが研究によりわかっています。その理由は、サプライチェーンがグローバル化しており、ひとつの製品は、ある一国だけで作られているというわけではないからです。中国も同様です。

そのいい証拠が日本の状況です。アベノミクスの政策のひとつに量的質的緩和として大規模な金融緩和を行いましたが、これで経済が回復したかというと、決してそういう状況ではありません。

それに、中国の企業はドル建てで債務を抱えているところも多く、ドルに対して為替を切り下げると、この債務が膨らむことになります。そうなると、むしろ逆効果ということになるでしょう。

現代の経済は、通貨を切り下げればいいという単純なものではないということですね。

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